[ テーマ: 病気 ]
2010年7月27日15:23:17
久しぶりに病気のお話です。
この猛暑続きで熱中症の患者さんが急増し、多くの方がお亡くなりになっているとのニュースが連日報道されていますが、恐らくこの同じ期間中に熱中症で命を落とした犬の頭数は比較にならないほど多いのではないかと思います。
それなりに自由にお部屋の中を移動できるからなのか、僕は猫の熱中症は経験したことがないので、やはり犬が非常に心配です。
先週入院していた患者さんはカミナリに驚いてケージ内で暴れた後に動けなくなってしまったとのことで来院。
来院時には体温は40度ちょっととそれ程高いわけではありませんでしたが、眼球結膜や口唇部には出血徴候も認め、かなり危険な状態。
翌日には肝酵素もはね上がり、急性の腎障害まで併発。血小板数も減少。
飼主様にも亡くなるリスクについて説明しなくてはなりませんでしたが、幸いなことに入院4日目から改善し、元気に退院することが出来ました。
今回の原因は恐らくカミナリに驚き暴れた為、軽い熱中症の状態になり、DICもしくはPre-DICに陥ったものと考えられます。
ちなみに熱中症におけるDICの発生率約50%との報告もあります。
DICは腫瘍疾患、免疫疾患、感染・炎症、手術などでも引き起こされる可能性があり、まず体内の血液を止める働きをする経路が過剰に働き出します。
そうすることで、血管内に血液の塊である血栓が大量に作られ臓器障害を引き起こしたり、また血栓を溶かす働きをする経路も過剰に働き出すことで、逆に血液が止まりにくくなってしまいます。
DICに陥ると死に至る可能性が非常に高くなります。
治療は原因にもよりますが、ステロイドや低分子ヘパリンによる抗血栓療法、輸血など。
DICには気をつけましょう!とはさすがに飼主様には言えませんが、やはりこの時期熱中症にはお気をつけください!
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2010年4月23日21:59:26
先日膀胱炎の治療をしているけれども良くならないという事で来院していただいたポメラニアン。
お腹の超音波検査を行うと膀胱に結石らしき影と子宮にも異常を認めたためⅩ線検査を行うと…
さすがにここまで巨大な結石は珍しいです。
あまりに大きいので超音波検査のときに糞塊と間違っているのかと思いました。
子宮も水腫様に腫れていたので、膀胱切開と一緒に子宮と卵巣も切除しました。
直径4cmの膀胱結石です。
ずっとお腹が痛かったと思いますので、これですっきりしてくれると良いですね。
ただ今後は再発をできるだけ予防するため、結石鑑定の結果に基づいて食事管理が大切になります。
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2010年1月8日19:05:40
猫の感染症の中で最も厄介なものの1つにFIP(猫伝染性腹膜炎)というものがあります。
猫コロナウイルスが原因で、胸腹水が溜まる滲出型(wet type)と目や神経症状を特徴とする非滲出型(dry type)に分かれます。
ワクチンなどの予防手段は無く、感染してもごく一部の猫でしか発症しないといわれていますが、もし発症してしまうとそのほとんどが死亡してしまいます。
しかも経験的には1歳未満の純血種の仔猫に滲出型の発症が多く、いまだ明確な診断・治療法が確立されていない為、診察においても非常につらい病気の一つです。
今日亡くなった仔猫も先日2回目のワクチン接種に来院された際、数日前より元気食欲が無く、食欲がない割にお腹が張っていました。
調べると典型的な腹水が貯留していて血液検査では黄疸もあり、FIPが強く疑われました。
大学などの研究機関でも治療法などが検討されていますが、早く効果の高い治療法が見つかって欲しい病気の一つです。
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2009年10月11日21:19:47
緑内障とは眼房水という眼球内の液体が過剰に溜まってしまうことで、眼球内の圧力(眼内圧)が高くなり、目の痛みや視力障害を起こす病気です。
症状は突然激しい目の痛みをともない、元気食欲の消失や目の異常(充血、白濁)が出る場合や、目の炎症などに続いて徐々に悪化するものもあります。
当院ではこのような眼圧計を用いて眼内圧を測定することで診断しています。
当院では柴犬やコッカースパニエルが圧倒的に多く、今日の患者さんも柴犬でした。
一般的に動物の緑内障は診断時すでに視力は消失していることが多く、治療の目的は眼内圧を低下させ、痛みをとってあげることと、反対側の目もいずれ発症してしまうことが多いため、その予防に努めます。
当院での治療は緊急時は浸透圧利尿剤の点滴を行った後に、眼房水の産生を抑えたり、排泄を促す目薬や内服薬を使用しますが、緑内障の目薬は高価なのが難点です。
どうしても痛みがコントロールできない場合は眼球摘出も行います。
近年獣医療においても眼科専門医の先生も増えているため、本当はそのような設備や知識、経験豊富な先生に診断・治療をお願いしたい病気ですが、現在の県内の状況では難しいので、眼科は少しずつ勉強していかなければいけない分野のひとつです。
今日はお祭りでした。
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2009年9月15日21:27:14
尿中にできた結晶や尿道栓子が尿道につまり排尿が出来なくなってしまう状態です。
対処が遅れると命にも関わる非常に危険な状態です。
一般的にはこれから寒くなるに連れ増えてくる病気ですが、今年は夏の間もチラホラ見かけました。
最近は、他の動物病院で治療を受けたけれども翌日から数日後にまた詰ってしまったという事で当院に受診されるケースが増えています。
処置や治療に対する考え方は動物病院によって様々で、一概にどれが良いとも言えませんが、 当院では必ず麻酔をかけてから膀胱にカテーテルを通して、溜まっている尿を出します。
その後、血液状態が正常に戻るまでは入院治療とし、カテーテルを抜いた後、自力で排尿が出来ていることを確認して退院となります。
退院後も食事管理が大切になります。
ただ問題なのは尿路閉塞を起こす猫の中には怒りん坊が多いということ。
今日午後一番の患者さん(猫)も昨日他院で処置を受けたのですが、また詰ってしまったとのことでした。
昨日無麻酔での処置を受けたせいか、血液検査をしようとしてもひどく怒るので、先に麻酔をかけさせてもらいました。
無事カテーテルも留置できたのですが、今夜からの入院管理がちょっと心配です...
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2009年9月2日22:04:15
猫のお腹のX線写真です。
お腹の中に白く棒状に映っているのは全て糞塊です。
恐ろしいほどの便秘症です。
『巨大結腸症』という病気は猫に多く、骨盤骨折による骨盤狭窄が原因になる場合もありますが、この猫のように正確な原因が分からない場合もあります。
最初にこの猫のお腹を触ったときはゾッとしました。
あまりのひどさに手術による糞塊の摘出も考えましたが、何とか麻酔下である程度の便を出すことが出来ました。
『巨大結腸症』に根本的な治療法はありません。
内科療法として便をゆるくさせるお薬を使用したり、定期的に浣腸をして便がたまらないようにしてあげます。
外科治療としては、結腸の部分切除をすることで永久的に便を軟化させることで排便を促す方法や、骨盤の骨を切除し骨盤腔を拡張させて便が出やすくさせる方法があります。
猫は犬よりも便秘症になりやすいですし、トイレに関しては非常にこだわりが強い動物です。
常にトイレは衛生的に管理をすることに加え、多頭飼育の場合は頭数プラス1個のトイレを用意することも勧められています。
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2009年8月9日17:09:34
今日は高松には珍しく朝から強い雨が降り続けていますね。
この数日気温・湿度とも高く、皮膚病の患者さんが急増中。
なかでもとくに多いのは、強い痒みをともなう急性湿性皮膚炎(ホットスポット)と呼ばれるもので、太ももの辺りに出来ることが非常に多いです。
ちょっと痒そうに舐めているなぁと様子を見ていると、一晩で真っ赤にただれてしまいます。
ひどい場合は短期間のステロイド、抗生物質の治療により、普通は長くても1週間くらいで良くなりますが、炎症がひどいとなかなか毛が生えてこない場合もあります。
ノミ等が原因になる場合もありますので、ノミの予防もしっかりとしてあげてくださいね!
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2009年7月29日22:04:00
少し怖い写真ですが、この老猫は突然右目が大きくなってきたということで来院。
顔を触られることをひどく嫌がります。
高齢の為、眼球やその周囲の腫瘍なども考慮し、まず麻酔をかけて検査です。
ほんとうはCT検査が最適な部位ですが、まずX線検査や眼球の超音波検査などで眼球自体には問題が無いことを確認。
口腔内を検査すると同側の最後臼歯が化膿していたので抜歯しました。
抜歯でドロドロっと膿が大量に出てくることを期待したのですが、それ程出てきませんし、眼球も引っ込みません。
諦めずに丁寧に洗浄していると眼球の奥の部分に到達し排膿できました。しかし、この時点では眼球は処置前と同じ状況。
麻酔前の血液検査でかなり腎臓の状態も悪いことが分かっていたのであまり無理をせず抗菌剤での治療にかけることにしました。
処置後4日目頃からようやく目が引っ込み始めて今朝はかわいい顔に戻りました。
眼球摘出にならずに済んで本当に良かったです。
動物の場合、歯からの感染によって鼻の辺りや眼の下の部分などに膿が溜まることは良くありますが、今回のように眼球の後ろに溜まってしまうことで眼球が突出してくるのは当院では2例目でした。(ちなみに1例目はダックスでした)
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2009年7月27日22:19:04
猫の糖尿病に多くみられる臨床徴候は多飲・多尿、体重減少ですが、なかには蹠行姿勢といって歩くときにかかとの部分まで地面につけるようになる場合があります。
この症状は糖尿病性神経障害によるもので、今入院してインスリンに対する反応をモニターしている猫の来院理由も後ろ足が少しふらつくことと、トイレ以外の所でも排尿をするというものでした。
猫の糖尿病は多くの場合1日2回のインスリンの注射と同時に高タンパク・低炭水化物の食事管理が重要となるため、飼い主様への負担も大きくなります。
しかし猫の糖尿病の中には食事療法の結果インスリンが必要なくなるケースもあるので、まずはあきらめずにがんばって管理していくことを飼い主様にお勧めしています。
ただ怒りんぼうの猫の場合は血糖値のモニターすら困難になるため、安全にインスリンを注射できないため治療も難しくなりますが、今入院している猫は性格も穏やかで糖尿病食もしっかり食べてくれるため経過も順調です。
中年以降の猫で元気食欲はあっても、昔に比べお水を良く飲むようになったり、痩せた気がする場合は糖尿病の他にも腎臓の病気や甲状腺の病気などの可能性もありますので、一度病院で健康診断を受けてみてください。
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2009年7月17日15:52:31
ネギ類(タマネギ、ネギ、ニラ、にんにくなど)を食べさせてはいけないことはすでにご存知の飼主様が多いと思います。
その為夕飯の準備時の時間などに病院への問い合わせも多いです。
何故ネギ類を食べさせてはいけないかというと、ネギに含まれる成分が血液中の赤血球膜の酸化的障害を引き起こし、結果とし赤血球が壊れ(溶血といいます)、溶血性貧血が起こります。
この中毒はたくさん食べたから問題というよりは、犬や猫のネギ類に対する感受性が問題となります。
その為ほとんどのケースは問題ないのですが、まれにほんの少量口にしただけでも症状が現れることもあります。摂取後はとくに尿の色が濃くなったり、赤くなったりしていないか注意してください。
溶血がおこると成分が尿中に排泄され、尿の色が濃くなります。
問い合わせに多いのがハンバーグやサンドイッチなどですが、お味噌汁や牛丼の汁、焼肉のたれなども成分が溶け出ているので危険ですから注意してください。