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2009年7月15日22:39:51
今回紹介する病気は『唾液腺粘液瘤』というものです。
写真は舌下の粘液瘤(ラヌラ)で通称『ガマ腫』とも呼ばれます。
この症例は同側の頸部にも粘液瘤ができていました。
唾液を分泌する唾液腺やその導管が障害を受け、唾液が漏出・蓄積し、肉芽組織に囲まれた状態です。
唾液腺は耳下腺、下顎腺、舌下腺、頬骨腺がありますが、一般的に問題になるのは舌下腺です。
治療方法は ・単に数回吸引するとそのうち貯留しなくなる場合、・写真のようなラヌラの場合はその部分を切開する造窓術、・下顎腺と舌下腺の切除 などがあります。
今回はまだ若いフレンチブルドックでしたので、飼主様と相談して一番再発率が少ない方法である下顎腺と舌下腺の切除をおこないました。
ゆっくりゆっくり下顎腺を丁寧に分離していきます。
時間がたって少し干からびてしまっている写真で分かりにくいのですが、摘出した唾液腺と舌下腺です。
この病気は処置をしたり手術をしてもその後再び溜まってしまう症例も多いです。
幸い僕はまだ経験がありませんが、当院の患者さんの中にも昔手術をしたけどこぶとり爺さんのようになっている子が数頭います。
ということで僕もどちらかというとあまりしたくない手術の1つですが、幸い今のところこの症例は経過も順調です。
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2009年7月1日21:57:53
猫にとって非常に厄介な病気の一つに口内炎があります。
細菌やウィルス感染による炎症とも考えられていますが、明確な原因は分かっていません。
ひどくなると口が痛くて採食が困難となります。
治療法としては、多くの場合はステロイドを投与することで炎症・痛みを軽減させますが、徐々にお薬も効かなくなります。
他の治療法としてはレーザー治療や様々なお薬が試されていますが、ステロイドに変わる治療法はなかなか見つかっていません。
その為、当院ではステロイドの治療を行う前に全ての奥歯を抜歯することを勧めています。
抜歯のメリットとしてその部位の炎症を軽減させることで40~70%の改善率が期待できるとのデータもあります。
しかしこの処置の前に長期間ステロイドの治療を行っていると効果が悪いとの報告もあります。
当院に口内炎を主訴に受診される患者さんの多くはすでに長期間ステロイドの治療を受けているケースが多い為、それ程多く行う処置ではありませんが、今日は口内炎の状態はひどいながらも何とか採食できている猫の全臼歯抜歯を行いました。
口の中は真っ赤でとてもかわいそうな状態です。
この処置は結構大変で、患者さんには長時間の麻酔を必要とします。
最終的にはステロイドの治療が必要になると思いますが、なんとか少しでも長くお薬を使わずにごはんを食べてくれればと思います。
ステロイドの治療も長期作用型の注射での治療はなるべく避け、投薬可能な猫には、痛みをコントロールする為に最小限必要な量のお薬で維持することをお勧めしています。
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2009年6月23日20:41:00
今日は当院にしては少しハードな一日。
まずは今朝3時に緊急用の携帯電話で起こされました。
昨日飼主様が帰宅すると部屋はものすごく暑く、犬もぐったりしていたそうです。
様子を見ている間にどんどん呼吸状態も悪化し、血便も出てきたのであわてて連絡してくれました。
昨日の高松の最高気温は34度。今年最初の熱中症患者です。
来院時の体温は42℃近く。 42℃を超えると体内の細胞障害が起こります。
意識もしっかりあったのでとりあえず冷水+送風で体温を冷まし始めたのですが、これがなかなか下がってくれません。
最終的には麻酔をかけて体温を下げ、ようやく落ち着いたときには外も明るくなっていました。
高体温による影響は脳、心臓をはじめ腎・肝臓・胃腸・筋肉へと広範囲に及びます。
また50%近くがDICという血液凝固不全の状態に陥るとも言われています。
お昼は唾液腺(下顎腺と舌下腺)切除の手術。
ガマ腫とも呼ばれる病気の為の手術ですが、患者さんがまだ若齢で短頭種のため、いくつかある治療法の中で積極的に完治を目指す手術法を選択しました。
それ程頻繁に行う手術ではない上、非常にデリケートな手技を要する手術の為、睡眠不足の体にはかなりきつい手術でした。
そのまま休憩なしでの午後一番の患者さんは40kg近いシェパードの耳血腫。
飼主様とスタッフ皆で押さえて耳に溜まった血液を吸引後、上手く治ることを祈りつつお薬を注入。
そして夕方にはまた熱中症の患者さん。
散歩中雌犬に興奮して追いかけた後で突然呼吸が苦しくなったそうです。
点滴の為の血管を確保する為に体を少し保定するだけで舌の色が紫色になり、その後失禁。
ちょっと危険な状態でしたが、診察終了時には少し落ち着きました。
今夜は室温をかなり下げた入院室で体温に注意しながらお預かりです。
今日は充実した一日でした。
暑い!
人間も水分補給をしっかりして、体調管理に気をつけましょう。
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2009年6月17日23:05:00
レッグペルテスとは若齢の小型犬種(チワワ、プードル、ポメラニアンなど)にみられる病気で、大腿骨頭が壊死してしまう病気です。
予防で来院された際に、以前から右後ろ足を気にするということでした。
そこでX線検査をしたところ向かって左側の大腿骨頭が変形していました。
この病気の治療法は、このX線写真のように手術で変形した大腿骨頭を切除します。
この病気がみられる犬種には、膝のお皿の骨(膝蓋骨)がゆるいことも多く、軽い症状の場合膝が原因と誤解してしまうこともあるので注意しないといけません。
今日はこの手術ともう1件ウサギの手術。
保育所で飼われているウサギの陰部から大量に出血しているとのことで来院。
陰部から出血している場合は子宮の異常であることが多いのですが、このウサギは陰部の腫れがひどく、僕も奥さんも初めてみる症状。
しかもお腹のなかには大きなしこりが触知でき、腫瘍?結石?と思いながらX線検査を行うと
赤ちゃんでした。
1頭でのケージ飼育とのことでしたが、以前掃除をするときに数頭一緒にしたらしく、恐らくそのときに妊娠したのだと思います。
緊急的に開腹すると胎仔はすでに亡くなっていて子宮は変色し、お母さんもかなり危険な状態でした。
無事手術を乗り越えたので、なんとか元気になってくれればと思います。
今日は診察は比較的のんびりとしていましたが、お昼の手術時間で体力を使った1日でした。
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2009年6月15日20:53:32
今日は午後の診察だけで、最近咳が増えたということで検査をするとフィラリア陽性だった犬が3頭もいました。
一度フィラリアに感染すると心臓や肺にダメージが残ってしまいますが、フィラリアに対する治療・予防の選択肢や心臓の悪化を遅らせるための治療などもあります。
最近咳が増え、フィラリア予防をしていない場合は早急に検査・予防をしてあげてください。
またこのように感染した状態で突然フィラリア予防薬を飲ませることは非常に危険です。
安易にお薬をもらってきて飲ませてしまうようなことはせず、できるだけちゃんと検査を受けるようにしてあげてください。
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2009年5月27日21:30:00
先日このブログでも今年はマダニが多いと書きましたが、今日午後一番にフィラリア予防に受診していただいた患者さんはそのマダニが媒介する『バベシア症』でした。
例年であればフィラリア検査の為の採血すら困難なほど暴れるのですが、今年はいつもと違って大人しい様子。
これはチャンスと思い『せっかくなので健康診断をかねて血液検査をしましょう』と勧めてみると、飼主様も『そういえばこの数日元気が無いので、できれば検査してください』と了解していただきました。
採血した瞬間から『血がうすいなぁ』と感じたのですが、調べてみるとひどい貧血と血小板数の減少、軽度の黄疸。
血液塗抹で赤血球を調べるとバベシア原虫が認められました。
当院でのバベシア治療は、昔からある注射による治療法(重篤な副作用が起こるリスクがあります)か、高額な治療費になってしまうのですが比較的安全な内服薬での治療法(再発率が少し高い)を飼主様に選んでもらっています。
高齢の為、内服薬での治療を開始させていただきました。
フィラリア予防で受診した患者さんがバベシア症だったのはさすがに今回が初めての経験ですが、何とかいつもの元気すぎるくらいやんちゃな姿に復活してもらいたいものです。
当院でバベシア症に罹患した犬はラッキーなことにみんな元気にしてくれていますが、一度感染したバベシア原虫は完全に体内から排除することは不可能です。
つまり一生再発のリスクを背負うことになります。
当院ではチワワやシーズーなど一般的にはバベシア症とはあまり縁の無さそうな犬種での発生もあります。
『うちの子は大丈夫だろう』と考えず、万一に備えてノミ・ダニ予防薬を定期的に使用してあげてください。
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2009年5月25日21:40:14
分かりにくい写真ですが、長さ8~16mmの白い虫です。(干からびてしまいました。)
半年もの間目ヤニが止まらないということで先日受診した犬の目から除去したものです。
この虫の正体は『東洋眼虫』という寄生虫です。
ショウジョウバエの一種であるメマトイが媒介します。
点眼麻酔をした後、ピンセットで除去しましたが、犬もさすがに目にピンセットを近づけると少しは嫌がりますし、虫も瞬膜や瞼の奥に逃げ込んでなかなかすぐには取り除けません。
なんとか5匹除去しました。
今後は飼主様に注意して目を観察してもらい、症状が改善しなかったり、まだ虫が残っているようであれば、全身麻酔をかけての処置が必要になるかもしれません。
動物の涙が多かったり、目が充血していたりする場合はひょっとしたら虫がいるかもというふうに考えて目を観察してみてください。(普通はいないと思いますが....)
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2009年5月14日20:52:17
炎症性乳癌とは乳腺腫瘍のなかで最も悪性のものです。
手術も適応外で、手を出すことすらできないつらい腫瘍です。
昨日もなんとか摘出できないものかと、全身麻酔をかけるまではしたものの、数日の間でさらに進行していて、結果的に動物・飼い主様にとってもメリットがないと判断し、断念しました。
今回の症例は、昨年当院で大きな手術を乗り切ったダルメシアンの老犬。
3年間もお腹の中に毛布の切れ端がとどまっていて、輸血をしながら、腸を50cm近く切除しました。
手術後は非常に経過も良く、手術前には15kgをきっていた体重も今では20kg以上にまで改善しており、飼い主様も非常に喜んでいただいていただけに、今回のショックはさすがに大きかったです。
乳腺腫瘍は雌犬が罹患する腫瘍疾患の4割を占めるというデータもあります。
その乳腺腫瘍は2回目の発情までに避妊手術を行うことで、ほぼ100%防ぐことが可能です。
ということもあって僕は2回目の発情前の雌犬を飼われている飼い主様にはしつこく話をしてしまいます。
うんざりされている飼い主様もいらっしゃるかもしれませんが....
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2009年4月24日23:15:00
飼主様にとっては当然聞き慣れない言葉だと思いますが、『エプリス』というのは口の中にできる腫瘍のひとつです。
『歯肉腫』とも呼ばれていました。
先日朝一番で来院したゴールデンです。
朝、突然口が血まみれになっていたということで飼主様はかなり驚かれていました。
奥の方にできていたのでなかなか気づけなかったようです。
エプリスは組織的に3つのタイプに分かれますが、中には浸潤性の高い(顎の骨にも入り込む)ものもあります。
今回は骨性エプリスというもので浸潤性も低く、 急速に進行するタイプではないので良かったのですが、完全切除は困難なので今後も注意深い観察が必要です。
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2009年4月20日21:14:05
肛門嚢とは『臭い袋』とも呼ばれる分泌腺のことで、肛門の両脇に存在します。
本来は排便時に臭いの強い分泌物が一緒に排出されるのですが、分泌物が溜まってしまうことも良くあります。
炎症によって開口部が狭くなると余計溜まりやすくなり、さらに化膿してしまうこともあります。
この写真の子は肛門の右下のところの皮膚が破けてしまい、中から膿汁が出ています。
毛を刈ってみると、3箇所も皮膚に穴が開いていました。
ここまでひどくなるとかなり痛く、かわいそうですね。
反対側の肛門嚢の内容物はカチカチに固形化してしまっていたので、放置しておくと同じようになっていたと思います。
お尻が気になりだすと、床にお尻をこすりつけたり、しきりに舐めたりします。
溜まりやすい子は定期的に絞ってあげる必要がありますのでご相談ください。